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いいぞ!って言った話【昔話シリーズ】

小学生の頃、少し遠出した所に滅茶苦茶長い滑り台があった。

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こんな感じのローラーの滑り台で開始地点がべらぼうに高い。

子供が好きなものといえば…

滑り台スリル珍しさ

これです

やるでしょ、滑り台。

 

という訳である日もいつものようにその公園に行くと滑り台をやるぞと足を早め遊具へ向かう。

高揚した気分でその滑り台へと登って行くと、いつもと様子が違った。並び列にいる先客達が明らかになにかにビビり散らかしている。

それによく見てみると誰も滑っていない。

「誰も滑らないの?」と聞くと一人の子供が滑り出し口の横にいるガキに指を指し、その先を見ると…

ガイジだった。ガイジが滑ろうとする子供に何故か攻撃をしている。

マジのガイジではなく多分普通にちょっとグレーなガイジっぽい感じではあったのだけれどとにかく邪魔をしていた。

今は社会の底辺を彷徨いコミュ障ウンコクズインキャでかつてスクールカースト最底辺にいた俺もこの頃は小学生だったのでイキってそのガイジに関わってしまい

「おい!邪魔してんじゃねえよ!」内心ビビりながらもストレートな怒りをぶつけるとガイジは「滑んな~~~!!!!!!!!」みたいな言葉を叫んでブチギレだした。

俺も負けじと「俺は滑るからな!」とちゃっかり順番を抜かし滑り出すと、ガイジが半狂乱で俺のあとに滑り出す。

「おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!まて!!!!!!!!!!!!!!」
「来んなぁああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ガイジとの滑り台上の長距離チェイスバトルが始まった。

滑り台のフチを掴んで体を前にやってスピードを出そうとする。

ローラーのせいでケツが痛い。摩擦でケツが焼けたらどうしてくれるんだ。

ガイジは相変わらず「おい!!!!!!!!!!!滑んなぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」と叫びながら俺を追いかけてくる。

まぁ先に滑り出した俺に分はあるのだけどなにせ俺も怖いので全力で滑っていた。

やがて大カーブが見えてくると減速しないように仰向けになり足を上げた。

ふと見上げると俺の視界に入ったものは、足で立って半座りで滑ってきたガイジ。

ローラータイプの滑り台だからこそできた技。ガイジは俺とのチェイスバトルで成長したのだ。

俺は気づいたときには真後ろに立たれ何も出来ず、あきらめモードに入ってしまった。

その時。

その滑り台、カーブゾーンを超えた先に滑り台に金属のアーチが出てくるのだ。

立ちながら滑っていたガイジはそこに見事に顔をぶち当て体勢を崩し、大幅減速。

そしてその後ろを見ると後続で滑ってきた子供が連続でガイジにスライダーキックをしていく。

そのまま何事もなく滑り終えると、ガイジは大泣きしていた。

あいつは俺とのチェイスバトルをサシでやりたかったんだろう。

少なくとも戦いにおいてはいい戦いをしてくれたし、他の子供に攻撃され蹴られまくって彼の自尊心が傷ついたのはこちらとしても不本意だ。

子どもたちはそいつに落ちてる石や砂を投げ始めた。

自分たちが蹴ったことやそいつが泣き始めたことで自信がついてしまったのだろう。

最初はなんか邪魔してくるやべーやつだったのに今じゃただ滑り台で泣いてるただのガイジ、いじめの対象へと早変わりである。

そこで低学年くらいの子に声をかけられた。「ねえお兄さん!こいつに水鉄砲当てまくろうぜ!」

「いいぞ!」

邪魔したやつが悪い。