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"アベチャン"【昔話シリーズ】

中学時代、一応親も「勉強をしろ」と口では僕にしっかり言っていて僕がそれを受け止めたふりをして、勉強という名目で敷地内の倉庫の中にある書斎スペースに無駄に時間を使いサボりに行っていた頃の話。

 秋のある日も書斎に持ち込んだ漫画本を読んだり、隠し持ってきていたガンプラを触ったりして暇をつぶしていると倉庫から音が。

 それは「ガサガサ」だったり、「カッカッ」だったりしたのだけれどとにかく想像力が豊かな時分だったので「これ、もしかして泥棒が入ってきたのでは?」と何故かハイテンションになりもし、ここでしばき倒して捕らえれば「ヒーローになれるかもしれない」という浅い考えで近くにあったゴルフクラブを握り締めてドアを慎重に開けたんですね。

 書斎のドアを開けると目の前には小道具入れのような小部屋への扉が2つあるんですけど、1つが開いていたんですね。

もう「これ後ろから殴りかかれば勝ちでしょ」と入り口に背を付け、その行動に酔いしれながら部屋の様子を見てみると、野良猫がドッグフードを食べてたんですよ。

 「まま、おらんわな」と安堵しつつ野良猫の姿を見るともうガリガリのホッソホソでもう長くないんだろうなってレベルの痩せ方で

どっちかというと猫派の僕はドッグフードを食わせるのもなんだかな、という気持ちになり家で飼っている猫のごはんやらを持ってきて倉庫で食べさせてやった。

 もっと餌が欲しいからか鳴こうとはするのだけど、いかんせん体力がもうないためマラソンを完走した直後の猫ひろしみたいな声しか出ないので、水とご飯を与えて書斎の中でしばらく保護してやろうと思い中に入れ面倒を見ていると、なんだか愛着が湧いてきてその野良猫を飼うことになりました。

名前は阿部高和(やらないかのオッサン)のSSを直前に見ていたので「アベ」と名付けてしまった。

が、家族は「アベチャン」と呼んでいたので正式名はアベチャンとなった。

 

アベチャンが我が家に来てからというもの、アベチャンは元気になりぶくぶく肥えあまつさえ他の野良猫との子供を作って帰ってきたりした。

動物病院でもアベチャンは暴れたりしなかったのでとても大人しい猫だったのだけど定期的にスズメをデリバリーしてくるのだけはやめてほしかったぜ。

アベチャンはたまに家出をして夜に帰ってくるのを繰り返していたのだけど、たまに台風の日とかには探しに行くとどこかで雨宿りをしていて帰れなくなって鳴きまくっていた等心配になる場面もあった。

 

そして高校生になった頃、ある日もアベチャンは遊びに出かけて夕方に1度帰って来た時にご飯をあげて一撫でして、寝て起き次の日学校から帰るとアベチャンは帰ってこなかった。

事故に遭ったのか、保健所に捕まったのか(首輪はしていたので無いとは思うが)わからないがとにかくアベチャンを捜索したが結局見つかることはなく、

なんかたまに他の家に行ってご飯を貰ったりして生活をしていたらしい、という話を聞いたので上手くやって行ってると信じるしかなかった。

 

以上が急に現れ急に去っていった”アベチャン”という猫との思い出だぜ。

 

ちなみに後日談としてはアベチャンの息子は今でも我が家で元気に過ごしています。