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お祭り(エア)水鉄砲事件【昔話シリーズ】

 

祭り

もう10数年以上前の夏とか秋の間の中途半端な時期、近くで祭りがあった。

祭りと言っても多分生徒数がそこそこ多い高校の文化祭のほうがまだ賑やかってレベルの出店の数も少なく、にぎやかではないしょうもない祭りだった。

それでも田舎で他に娯楽がない小学生や中学生、地元から離れられない高校生達が少ない出店やイベントを楽しみに集まっていた。

 

所で「サメ釣りというグレイトな出店をご存知だろうか。

なんか口から番号のついた札を体の中に収納しているサメのフィギュアを磁石で釣り上げてその番号を見て景品をもらうアレ。

祭りと言えば出店、出店と言えばサメ釣りだった当時小学3~4年生の僕はたまには地元の祭りに行こうと祭りに来て開幕サメ釣りを見つけて駆け足で向かった。

サメ釣り屋台の主は60~70代くらいの老婆で、誰が仕入れたのかとかその辺の仕組みは全く知らないのだけれど「景品のセンスがアレ過ぎる」と友達と陰口を叩いたのを覚えている。

 

「おばさんサメ釣り1回~」

「はい600円ね」

 

600円。

小学生の600円と言ったら余程裕福な家庭でない限りバチクソに高額な数字で、駄菓子はいっぱい買えるしムシキングなら6回もやれてしまう。

しかし祭りのパワーというべきなのかクソ程要らない景品しかなくてもやってしまった。

言ってしまうとそこで貰った景品を覚えていない。あまりにしょうもなさ過ぎたから記憶から消したのだと思う。

だがそこでがっかり景品を握りしめて軽く微妙な空気になっていた僕たちの視界にあるものが入ってきた。

それは

「エアガン」「水鉄砲」

このバッチグーなアイテムがぶら下がっていた出店は「ボール掬い」だった。

サメ釣りを至高としていた少年僕もこのビッグアイテムには気づけばサメ釣りを投げ出して新しく小銭を握りしめて向かっていった。

 

流れるプールのような環状のコースを水が流れていてその上にスーパーボールが浮いているタイプでそのスーパーボールを取ることが出来れば、サイズ・個数によっていい景品がもらえるのだ。

値段も500ととてもサメ釣りと比べるとリーズナブルに感じ、迷わずプレイした。

おっさんに金を渡し、ポイを握りしめ、激流に身を任せたスーパーボールがわずかにプール壁に当たりゆっくりになるそのタイミングを狙いポイが少し水に浸かる位の位置からスナップを利かせ手持ちのお椀にIN。

勝った。

 

結果からするとみんな水鉄砲を手にすることはできた。

しかしエアガンをもらうにはボールのサイズやら量があまりにも条件が厳しくて取れなかったので水鉄砲で遊ぶことにした。

最初のうちはタンクに水を入れ、撃ち合うだけの極々普通の水鉄砲での遊び。

しかしどんどん遊びが過激になっていくのが小学生。

近くの公園のアスレチックコースにペットボトルを立てて陣地分けをして

全部のペットボトルが倒された方が負け、という割と今やっても面白い感じで遊び始めるものの、気づいてしまった。

力(りき)(りょく)(ちから)(パワー)

そう、水圧が弱い水鉄砲では中々ペットボトルが倒れないのだ。

そんなもどかしさも含めて楽しんでいるとNくんがやってしまった。

彼は”エアガン”を握りしめてやってきた。

一発でボトルを弾き飛ばすパワー、そして跳弾の恐怖。

水鉄砲での争いにエアガンを持ってくるのは「クソがよ」と思わなかったわけではないが「あいつはあのボールすくいをクリアしたんだなぁ」と思っていたら

「1500円でおっさんが売ってくれた!」

 

走る、走る、あいつより先に。

皆そんな気持ちだったのだろう。

今まで楽しませてくれた水鉄砲を走るのに邪魔だと判断しその場に捨て皆エアガンおじさんの元へ走る。

今思うとエアおじは子供から1500円を巻き上げて、やっすいちゃちいエアガンが面白いように売れてほくそ笑んでたようにも思う。多分ほくそ笑んでいた。

何はともあれ来ていた同級生で1500円を払う馬鹿にはエアガンが行き渡った。

 

エアガンで集団で撃ち合い、遊ぶ時に防具やグラスがないとどうなるかは想像に難くない。

泣く怒る叫ぶ、取っ組み合いの喧嘩に発展し、どんどん険悪な空気に。

エアおじはまさに武器商人のようだった。

子供にエアガンを高値で売り付け撃ち合わせて喧嘩させ、自分は儲けで祭りでビールと焼鳥を買って俺らの喧嘩を肴に飲んでいた。多分飲んでいたそうに違いない。

 

そこに1発のBB弾が同級生のKくんの目にクリーンヒットし、Kくんは泣き出してしまった。

撃った方向を見ると、そこには地元の他校の生徒がエアガンを持ってこっちに銃口を向けていた。前原圭一かよ。

一致団結、共通の敵が生まれたことで再び結束が生まれた。

うちわを盾にしながら前進し、そいつらにそいつらが持っていたカルピスをぶっかける。

しかしKくんはこれだけでは浮かばれない、そう思い皆で水鉄砲にカルピスを詰め込んで祭り会場にいる他校の生徒を見かけてはカルピス射撃で通り魔をしていった。

ほぼほぼ来ていた生徒がカルピスまみれになった頃だろうか、近くの大人にチクった生徒がいたのか俺たちはあわや捕まってしまった。俺はまた負けたのか。

 

 

後日学校側に指導され、互いに謝罪する機会が設けられた。

その帰り、僕たちの手にはエアガンが握りしめられていた。